決意。
まだ何も、始まってもいなかったんだ。
実家に向かう電車の中で漠然と思う。
大学を卒業し、いわゆる社会人となって2年。
仕事では躓いてばかりだ。
1年目の事務職は精神的にツラくて、ミスも多かった。
何の成果も上げられなかったし、いつまで経っても自分に自信が持てなかった。
2年目の夏に、事務職から製造現場へと異動になった。
受け入れてくれる上司やその環境に、少しずつ自信がついてきた。
でも、その分周りに甘え過ぎていた。図に乗って好き放題やってしまっていた。
ついに先日、先輩からお叱りを受けた。
それはとても真っ当で、正しくそのとおりで、何の反論もできなかった。
私は間違っていた。
頑張っているつもりだったけれど、ちっとも頑張れていなかった。
唯一の同期社員は、もう社長賞を獲るほど優秀なのに、私は何も残せていない。
何も、始まってすらいなかったんだなぁ。
漠然と感じたのは、きっと虚しさだ。
悔しい思いもある。羨む気持ちもある。
焦燥感のようなものも、確かに持っている。
けれど最も多く占めるのは、やはり不安感だ。
私には何ができるのだろうか。
できることが本当にあるのか。
今更遅いのではないか。
何をやっても無駄なのでは?
私は、まだ始めの一歩も踏み出せないでいる。
………ハッとした。
そうか、私はなんにも出来ない人なんだ!
心の何処かで、頭の隅で、「私はやればできるんだ」「あの人よりはマシなはず」って思ってた。
出来ない自分を、認められていなかった。
でも、それはお終いにすべきだ。
きっと私は、他の人よりもできない人なんだ。
だから、他の人よりずっと、たくさん頑張らないとダメなんだ。
他の人と比べて出来ないなんて、当たり前なんだ。
出来ない自分を、認めよう。
少し心がスッキリしてきた。
何事も努力が必要だ。
劣等生な私は、特に。
他の人の何倍も努力しよう。
そうすれば、私にも何か残せるようになるかもしれない。
私は、努力しようと決意した。
もうすぐ、実家の最寄り駅。
お昼の時間帯、ランチは何を食べようか。
久しぶりに会う母は、どんな話をしてくれるだろう。
仕事、頑張らなきゃな。